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口々にそう言う子ども達相手に、朱実は口を噤んでしまった。普段はそんな事がないのか、子ども達はますます心配そうな顔をする。
「ほらほら、お姉ちゃんには仕事があるんだから」
パンパン、と朱実は後ろから手を叩く音を聞いた。いつのまにか学園の寮長が、朱実の背後に立っていたのだ。
子ども達はわぁっ、と蜘蛛の子を散らすように去っていく。それを見て『やれやれ』と笑う彼女に、
「……弘子母さん」
朱実は所在なさげに俯く。
「明日は雨だね、こりゃ」
しかし、そんな朱実の呟きは無視し、弘子は全く関係が無いとしか思えない事を独白した。
朱実は窓から空を見上げるが、空は雲一つ無く、とても明日に雨が降るようには見えない。
「朱実が落ち込んでいることなんて、そうないからね」
それこそ晴天のようにカラッとした気持ちの良い笑みを弘子は浮かべる。どう答えて良いものかわらかない朱実はただ苦笑する。
「お前がそんな深刻そうな顔したのは、『インヴィテイション』になる、って言った時だけだね、私が知る限り」
「……らしくない? 私が悩むのは?」
いつも元気一杯に子どもの面倒を見ている姿にしても、また誠二を怒鳴り散らす姿からしても、想像しにくい。
「確かに、らしくないね」
だが慰めの言葉も何もなく、弘子は直球を投げ込んでしまう。再び俯く朱実に、弘子は構わず喋り続ける。
「あの時お前は言ったよね? 皆が目指せるような人になりたいって。皆が将来っていうものに希望を持てるようにしたいって」
でもね、と弘子は言葉を区切る。
「お前は、もうずっと昔からあいつ等に道を示してきていたと思うけどね、私は。面倒見て、一緒に遊んで、たまに悩んで」
お前は、あいつ等にとって、身近で、一番大きな目標なんだ。
「あいつ等に将来何になりたい、ってお前がスクールの寮に行ってから聞いた事があるんだ。あいつ等、何て答えたと思う?」
お姉ちゃんのようになりたいってさ。
朱実はその一言で顔を上げた。
「今そこを走っている全員、お前みたいになりたいんだと。『インヴィテイション』になりたいんじゃなくて、お前みたいになりたいんだとさ。どう思う、朱実?」
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