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優しげな言葉をかける弘子を後ろに、朱実はただ目の前で遊びまわっている弟と妹を見ている。
「私に、なりたい?」
「そう。あんたのようになりたい、とさ」
朱実はゆっくりとその語句の意味を噛み締める。
「……私のように、なりたい」
一人呟く朱実をその場に残し、弘子は部屋から出て行く。
外から聞こえてくるのは皆の笑い声。
「……笑っちゃうわ、どうして私みたいになりたいのよ? 勉強だって運動だって出来ないし、顔も良いわけじゃないのに……何考えているんだか、あいつ等は」
クスクスと一人笑い出す朱実の顔には、先程のような暗さはもう失せていた。
心拍音を表す機械的な音と、酸素吸入器の規則正しすぎるリズムを乱すように、コンコンと扉がノックされる。返事を待たずに扉は開かれ、その向こうから腕一杯に色取り取りの花を抱え持った誠二がこちらにやってくる。
「兄さん、元気だったかい?」
唇の端をつりあげただけの、即席である事は疑いようの無いぎこちない笑顔で、誠二は花瓶に花を活ける。
「ああ、今日は特別に休暇が出た。別にさぼった訳じゃない」
活け終えると、ゆっくりと椅子に腰掛けた。俯き、指を組み替える。シュコー、シュコー、と無機的な音だけが虚しく響く中、
「……今日は、相談があってきた」
答が返ってこない事を知りつつ、誠二は口を開いた。
「僕がなった『インヴィテイション』についてだ」
膝の上の拳を握り、
「兄さんは、多分、僕が『インヴィテイション』になる事には反対だったと思う。それはわかりきっている」
目線をベッドで横たわっている兄から逸らす。
「でも、兄さんの入院費を出せる職なんて、他には無い」
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