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三人の遺影に眼を戻し、春江には背を向けたまま話す。
「でも……私が、もっと嫌なのは、何も出来ない事なの」
呟き、膝の上に乗せた拳をきつく握り締める。
「もう……誰かが死ぬを見るのは、嫌なの」
「……怖くは、ないのかい?」
春江の問いに、一瞬、答えられなかった。
闘うのは、怖い。
……死ぬのは、もっと怖い。
でも、どんなに怖くても、闘わなければならない時がある。
……命がけで自分を共鳴体から逃がしてくれた、父のように……
「……怖いよ」
……でも……
「私、初めて自分の意思で決めたの。『インヴィテイション』になるって。友達や、その家族を、守ろうって」
自分に空手を教えてくれた、頑固で、でも頼りがいのある父。
大学に進む時には、あれこれ一緒に悩んでくれた母。
口が悪く、でも香の強さに憧れ、尊敬してくれていた弟。
誰も守れなかった……誰一人守れなかった……!
もう、あんな想いをするのは、嫌だ。
たとえ見知らぬ人であろうとも……あんな悲劇には、誰一人として立ち合わせたくない……
そう……自分にもっと力があれば、皆を守れたのだ。
香は正座したまま祖母の方を向き、無言で見つめる。
「……そうかい」
春江は口をモゴモゴさせ、何か言おうとしたのだろうが、香に言ったのは結局その一言だけ。
「わかったよ、お前の言う事は立派な事だ。頑張りなさい」
けど、と春江は背を向ける。
「お前は、一人じゃないんだからね。お友達や、一緒に戦うお仲間さんもいるんだからね? 一人で全部背負い込んじゃ駄目だよ?」
「……うん」
そして春江が襖を閉めようとする間際、
「……私も、いるんだからね、香や? 無理はしちゃ駄目だよ」
小さく、祖母は呟いた。
香はそれに、何も言わず、ただ深く、深く頭をさげた。
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